サバンナ
作品解題
神話伝説シリーズの第2作目、隔週刊誌「ビッグコミック」に全8回に亘り連載された作品。 神話伝説シリーズ第1作目の短編作品「ナータ」に続けての掲載で、連載第4回目までは二色カラー4枚付きで掲載された。 短編作品「孤島の出来事」に続くフキダシのない実験的な作品である。今までに3回単行本化している。 第1-2回が「第1部」、第3回が「第2部」、第4-8回が「第3部」の三部構成で成り立つ。 連載時の総枚数は計297枚。以下は各話枚数および脱稿日と「ビッグコミック」連載号。

第1回(39枚/1974年12月15日/1975年6月10日号)
第2回(32枚/1975年02月01日/1975年6月25日号)
第3回(49枚/1975年04月15日/1975年7月10日号)
第4回(36枚/1975年05月01日/1975年7月25日号)
第5回(31枚/1975年05月15日/1975年8月10日号):単行本では冒頭の1枚削除
第6回(29枚/1975年06月01日/1975年8月25日号):単行本では冒頭の2枚(扉頁)削除
第7回(33枚/1975年06月15日/1975年9月10日号):単行本では冒頭の1枚削除
第8回(48枚/1975年07月01日/1975年9月25日号):単行本では冒頭の1枚(扉頁)削除


※連載第1回目より

下にこの作品各回冒頭の文を載せる。第7回目にも冒頭に文があるが、これは第4回目もののと全く同一(単行本では頁ごと省かれている)。

われらは
狩人の後裔
その故郷 サバンナ
密林と砂漠に挟まれた
果てしなき曠野……

※連載第1回目冒頭

飢え 渇き孤独の荒野
風が雲を呼び
雨は大地を抱く
孤独の心に創造が芽生え
熱い手が生命を運ぶ
そして今
人は旅立つ
おおサバンナ狩人の故郷を

※連載第2回目冒頭

すべてのものの故郷 サバンナ
作物が生まれ 家畜が育ち
人も此処から旅立った
空を翔ぶもの海を渡るもの すべて帰り来る処
サバンナ! だがすでに人は還れない
人は産んでしまった怪物を………

※連載第3回目冒頭

サバンナ すべてのものの故郷
もの来りて帰るところ
だが人だけが故郷を捨てた
故に人に墓はない
人だけが怪物を産んだのだから
帰るところを求めて人は生きる

※連載第4回目冒頭

「ビッグコミック」2006年6月25日号誌上に掲載された夢枕獏との対談の中で白土はこの作品についてこのように語っている「最後に人間の目が開くシーンがありますが、私の持っている展望があんな感じだった。男とか女とか言ってられない、魚のなかにも困った時にメスがオスになったりするじゃないですか。そういうものを描いたんです」。


※連載第6回目扉頁および、最終第8回目の最終3頁分

この作品は大きな誌面で読むのと、文庫本サイズで読むのとでは受ける感動が違う。 その最たるものが雑誌初出時の最終頁だ。連載時は上の画像(右)のように誌面をはみ出すサイズで印刷されていたが、単行本のものは(A5サイズの小学館豪華愛蔵版でさえも)全て縮小して印刷されてしまっている。 好みの問題のようにも思うが、出来ることならば読者全員に実際のB5サイズの最終回掲載誌に触れてほしいと思っている。 私はこの実物大ともいえる人間の頭部の迫力に圧倒されしばらく抜け出せなくなってしまった一人である。