バッコス |
作品解題 |
※作中コマより
神話伝説シリーズ『バッコス』。西暦1800年代のアフリカを舞台に、ギリシャ神話の神バッコス(ディオニュソス、英語ではバッカス)を題材に描いた作品。この作品に登場する人間は全て黒人である。2年間でまとめて描かれた作品のため、全体の統一がとれており、白土の長編作品として単体での完成度は高い。白土は『バッコス』執筆直後に、文化人類学者の山口昌男と神話についての対談(「週刊ポスト」1979年1月5日号掲載)をしており、この作品のことも多く語っているので、興味ある人は対談が再録されている単行本「マンガ批評大系」第4巻(1989年9月25日発行/平凡社)を探し触れてみることを薦めたい。 連載時の『バッコス BACCHOS NEGRO』全45回は、第1回が「プロローグ」、第2-11回が「第一部誕生編」、第12-22回が「第二部放浪編」、第23-45回が「第三部復活編」の三部構成で成り立つ。カラーでの掲載は一度も無い。第一部の後に5回と、第二部の後に2回の休載を挟んでいる。各回の掲載枚数は第3回が27枚、最終第45回が32枚、それ以外は全て28枚で、連載時の総枚数は計1263枚。以下、各話脱稿日と「ビッグコミック」連載号、単行本化の際の改変を書く。ちなみに「一頁目」という記述は扉頁を抜いた(カウントしない)第一頁目のことである。 第1回(1976年08月19日/1976年10月25日号):最終頁削除 第2回(1976年08月29日/1976年11月10日号) 第3回(1976年09月18日/1976年11月25日号) 第4回(1976年09月25日/1976年12月10日号) 第5回(1976年10月07日/1976年12月25日号) 第6回(1976年11月04日/1977年1月10日号) 第7回(1976年11月11日/1977年1月25日号):最終頁削除 第8回(1976年11月29日/1977年2月10日号):最終頁と次回一頁目を一枚に改稿 第9回(1976年12月05日/1977年2月25日号) 第10回(1976年12月27日/1977年3月10日号) 第11回(1977年01月07日/1977年3月25日号):一・二頁目を一枚に改稿 第12回(1977年02月19日/1977年6月25日号) 第13回(1977年03月21日/1977年7月10日号):一頁目削除、最終頁と次回一頁目を一枚に改稿 第14回(1977年04月07日/1977年7月25日号) 第15回(1977年04月20日/1977年8月10日号) 第16回(1977年06月24日/1977年8月25日号):作中頁一枚削除 第17回(1977年07月06日/1977年9月10日号) 第18回(1977年07月26日/1977年9月25日号):一頁目削除 第19回(1977年08月12日/1977年10月10日号) 第20回(1977年08月30日/1977年10月25日号) 第21回(1977年09月13日/1977年11月10日号) 第22回(1977年10月04日/1977年11月25日号) 第23回(1977年11月15日/1978年1月10日号) 第24回(1977年11月29日/1978年1月25日号) 第25回(1977年12月15日/1978年2月10日号):最終頁を二枚に改稿 第26回(1977年12月27日/1978年2月25日号) 第27回(1978年01月04日/1978年3月10日号):一頁目削除 第28回(1978年01月18日/1978年3月25日号) 第29回(1978年02月11日/1978年4月10日号) 第30回(1978年02月27日/1978年4月25日号) 第31回(1978年03月06日/1978年5月10日号):最終頁削除 第32回(1978年03月14日/1978年5月25日号):最終頁と次回二頁目を一枚に改稿 第33回(1978年03月27日/1978年6月10日号) 第34回(1978年04月30日/1978年6月25日号):最終頁削除 第35回(1978年05月17日/1978年7月10日号) 第36回(1978年05月26日/1978年7月25日号) 第37回(1978年06月18日/1978年8月10日号) 第38回(1978年06月29日/1978年8月25日号) 第39回(1978年07月12日/1978年9月10日号) 第40回(1978年07月16日/1978年9月25日号) 第41回(1978年08月14日/1978年10月10日号):最終頁削除 第42回(1978年08月17日/1978年10月25日号) 第43回(1978年09月03日/1978年11月10日号):作中頁一枚削除 第44回(1978年09月21日/1978年11月25日号) 第45回(1978年09月24日/1978年12月10日号):一頁目削除 連載時は第1回以外全て扉絵(一枚ずつ)が付いているが、単行本収録時には流れ重視のため基本的に全て削除された。それでも単行本には章の区切りなどとして収録されている一部扉絵がある。上の「一頁目削除」「最終頁削除」というのは見開き調整のためにされた作業である。そういった中で単行本化の際、一部描き下ろしもしており、さらに愛蔵版刊行の際には単行本時の巻またぎの部分を連載時の扉絵で埋めていたりもしている(これはあとの文庫版にもそのまま受け継がれる)。その際の作中への扉絵の挿入は話の流れに違和感をもたらしてしまっているのが少し残念だ。扉絵として認識されるような挿入ならいいのだが、作中大ゴマのような見せかたをされるとやはり無理を感じてしまう。 単行本全5巻(ビッグコミックス「白土三平異色作品集」第4-8巻)※各巻表紙・裏表紙絵描き下ろし 第1巻/初版1978年12月1日(第1回-第9回を収録) P3(中扉):第9回扉絵 第2巻/初版1979年1月1日(第10回-第18回を収録) P3(中扉):第18回扉絵 P4(目次頁):第17回扉絵 P5(第一部誕生編扉):第11回扉絵 P59(第二部放浪編扉):第12回扉絵 第3巻/初版1979年2月1日(第19回-第27回を収録) P3(中扉):第25回扉絵 P4(目次頁):第27回扉絵 P5(第二部放浪編扉):第19回扉絵 P115(第三部復活編扉):第26回扉絵 第4巻/初版1979年3月1日(第28回-第36回を収録) P3(中扉):第29回扉絵 第5巻/初版1979年4月1日(第37回-第45回を収録) P3(中扉):第45回扉絵 P4:第37回扉絵 単行本化の際の描き下ろし頁 ・単行本第3巻P33(愛蔵版P517/文庫本第2巻P111) ・単行本第3巻P196-197(愛蔵版P680-681/文庫本第2巻P274-275)※一部連載時のコマ(第25回最終頁のもの)を含む ・単行本第4巻P31(愛蔵版P763/文庫本第2巻P357) ・単行本第4巻P165(愛蔵版P897/文庫本第3巻P73) ・単行本第4巻P220(愛蔵版P952/文庫本第3巻P128) ・単行本第5巻P59(愛蔵版P1033/文庫本第3巻P209) ・単行本第5巻P194(愛蔵版P1168/文庫本第3巻P344) 愛蔵版全1巻(小学館豪華愛蔵版「神話伝説シリーズ」第2巻)/初版1991年1月20日(全話収録) P5(中扉):第41回扉絵 P7(第一部誕生編扉):第5回扉絵 P249:第10回扉絵(頁合わせでの挿入) P303(第二部放浪編扉):第19回扉絵 P489:第11回扉絵(頁合わせでの挿入) P599(第三部復活編扉):第29回扉絵 P735:第28回扉絵(頁合わせでの挿入) 文庫本全3巻(小学館文庫「神話伝説シリーズ3」)※各巻表紙絵描き下ろし 第1巻/初版2000年12月10日(第1回-第15回を収録) P3(第一部誕生編扉):第5回扉絵 P245:第10回扉絵(頁合わせでの挿入) P299(第二部放浪編扉):第19回扉絵 第2巻/初版2001年1月10日(第16回-第31回前半を収録) P3(第二部放浪編扉):第41回扉絵 P83:第11回扉絵(頁合わせでの挿入) P193(第三部復活編扉):第29回扉絵 P329:第28回扉絵(頁合わせでの挿入) 第3巻/初版2001年2月10日(第31回後半-第45回を収録) P3(第三部復活編扉):第45回扉絵 参考資料として挙げられているもの 「性的倒錯」メダルト・ボス/村上仁・吉田和夫(1957年/みすず書房)※連載時第7回には記載無し、単行本で記載(セリフに「 」が付く) 「支配の発生-民族学と社会学の境界」ジークリスト/大林太良・石川晃弘・長谷川博幸・岡千曲(1975年/思索社) 「支配の諸類型」(「経済と社会」第1部第3-4章)マックス・ウェ−バ−/世良晃志郎(1970年/創文社) 「宗教社会学」(「経済と社会」第2部第5章)マックス・ウェ−バ−/武藤一雄・薗田宗人・ 薗田坦(1976年/創文社) 「ギリシア神話(上下巻)」ロバート・グレーヴス/高杉一郎(1962・1973年/紀伊國屋書店) 連載終了直後の対談(上述)で白土が読んだとする書籍 「アフリカの創世神話」阿部年晴(1965年/紀伊国屋新書) 「アフリカの神話的世界」山口昌男(1971年/岩波新書) 現代マンガ図書館「白土三平資料」では、第2回の連載枚数と第6回の脱稿日記述が間違っている。 |