甲賀武芸帳 |
作品解題 |
※第6巻P113、第8巻P38より
白土の第2作品目にして、初の長編作品。貸本全8冊で完結している。 「ここは信州霞郡 深いもやに包まれてそびえ立つ深山 みみずく谷の一角」。甲賀流忍者石雲の下で修行する石丸の前に、天地2巻の巻物「甲賀武芸帳」を狙う伊賀流忍者疾風小僧があらわれる。石丸は母を捜し旅をするあけみと出会う。巻物を狙った伊賀でも甲賀でもない九州霧島の忍者筑波剣流に石雲が殺されてしまう。その隙に真田の忍者烏帽子天馬が巻物を奪うが、その足で真田幸村のもとに向かう途中、疾風小僧が巻物を奪う。疾風小僧と筑波剣流の戦い中に、今度は真田幸村が巻物を奪うが、天の巻は石丸が取り返す。あけみは幸村の娘だった。天の巻を石丸から奪うために幸村は娘のあけみと共謀し石丸を呼び出すが、そのあけみは疾風小僧の変装だった。石丸と疾風小僧に敗れる幸村。そこに剣流が現われるが、2人ともかなわない。そこにね太郎が現われ剣流を倒す。 と、これが第1巻の要約であるが、忙しなく巻物が行ったり来たりといった内容。続刊も巻物の行方が中心となっているが、様々なキャラクターが登場し、読者を飽きさせないものになっている。第2巻の石丸が地面に羽を突き刺し水を掘り当てるやり方は、後に「サスケ」でも使われる。第3巻には山窩が登場し、第4巻には1頁丸々忍び道具解説というのもある。第5巻には石丸の目に映る筑波剣流という実験的なコマ描写、第6巻以降は何故巻物を奪い返さねばならないのか、剣とは何か、といった詰めた内容のものになっている。ね太郎とチコが息抜き的な存在を担っている。 ストーリ−の半分くらいまでは後の作品「風の石丸」内で追っており、後半の一部は「嵐の忍者」などでも使用されている。 女性キャラクターの描写に手塚治虫の要素など、実験的なコマもちらほらみえる。下の場面、娘・五鈴の死に、頭領は生き残った山窩を従え刑場の石丸を助けに向かうが、地雷と、馬上を狙い撃ちにされ全滅してしまう。「カムイ伝」での右近の最期の様な悲しい結末である。こういった大きなストーリーの流れ的には全く意味を成さないようなキャラクターの行動が、白土作品内ではとても活かされており、物語に厚みを与えている。 ※第4巻P7 |
各巻目次 |
第1巻 (甲賀武芸帳)
「みみずく谷の怪少年」 : P4- 「甲賀武芸帳」 : P15- 「人喰いやもり沼」 : P22- 「きのこ沢の二人」 : P36- 「石雲の死」 : P51- 「真田の忍者」 : P65- 「怪童ね太郎」 : P74- 「豊臣の残党」 : P79- 「激戦卍巴」 : P83- 「二人のあけみ」 : P92- 「決闘笛吹きが原」 : P100- 第2巻 (続甲賀武芸帳 2) 「武芸帖の秘密」 : P7- 「柳生流八重垣」 : P18- 「二刀流開眼」 : P29- 「女忍者」 : P40- 「山小屋の男」 : P46- 「忍者決闘」 : P59- 「危機一発」 : P72- 「人買い屋敷の出来事」 : P81- 「水をくれ!」 : P90- 「忍者結集」 : P103- 第3巻 (続甲賀武芸帳 3) 「姥捨山のできごと」 : P7- 「その瞬間」 : P42- 「怪少女」 : P53- 「手練このは返し」 : P67- 「陰の忍者」 : P73- 「山窩の掟」 : P83- 「悲運」 : P123- 第4巻 (甲賀武芸帳 4) 「刑場異変」 : P4- 「二刀流の剣士」 : P22- 「術に生きる」 : P28- 「人によろこばれるきもち」 : P42- 「のろし」 : P54- 「地下牢」 : P88- 「火の山の決斗」 : P112- 第5巻 (甲賀武芸帳 5) 「火の山の決斗(二)」 : P5- 「吹雪の中」 : P104- 第6巻 (甲賀武芸帳 6) 「火の山の決斗(三)」 : P4- 「霧島の湯」 : P18- 「待て!柳生!」 : P31- 「武芸帖いづこ」 : P54- 「忍笛」 : P68- 「辻斬」 : P79- 「柳生屋敷」 : P90- 「対決」 : P106- 第7巻 (甲賀武芸帳 7) 「一葉浮水の構え」 : P10- 「再会」 : P18- 「尾行」 : P28- 「陰謀」 : P49- 「追跡」 : P62- 「忍びづたえ」 : P84- 「計略」 : P91- 「抜穴」 : P102- 「拷問」 : P115- 「謎の忍者」 : P121- 第8巻 (甲賀武芸帳完) 「異人館」 : P13- 「さいみん術」 : P32- 「決戦時雨谷」 : P37- 「真剣白刃砕き」 : P52- 「銃声!」 : P79- 「矢文」 : P94- 「忍者か?拳銃か?」 : P98- 「Gunfire!」 : P110- |