風の石丸
作品解題


  
※「週刊少年マガジン」1960年7月10日号(28号)より予告頁、連載第1-8・11・15-16回目扉頁

白土初の週刊誌連載。「週刊少年マガジン」1960年7月17日号(29号)から1960年12月25日号(52号)にかけて全24回連載された。 この作品に続けて「狼小僧」が連載されている。 「復刻版少年マガジン漫画全集」第1巻(1992年5月23日発行)に連載第16回目のものが印刷物から再収録されている。 ストーリーは以前の作品「甲賀武芸帳」(1957年)の前半部分をそのまま使用している。

2007年にマンガショップから発売されたMSS「風の石丸[貸本版]」全1巻は、貸本全3巻を印刷物から復刻したもの。 下のように連載時くっきりしていたコマがここにぼやけて収録されているのは、この部分が丁度貸本時の巻頭カラー頁に当たっていたため。

※連載第1回目(P66・P71)、連載第16回目(P95)より
貸本版全3巻について
※各巻表紙および第一巻中扉

貸本「風の石丸 1」岩石なだれ渡りの巻(1960年10月発行/講談社/150円):表紙画は連載第7回目扉絵の流用
貸本「風の石丸 2」龍煙の書の巻(1960年12月発行/講談社/150円):表紙画は連載第9回目扉絵(天地逆)、中扉絵は連載第11回目扉絵の流用
貸本「風の石丸 3」魔の谷の巻(1961年02月発行/講談社/150円):中扉絵は連載第16回目扉絵、登場人物紹介頁絵は連載第23回目扉絵の流用


連載中、貸本全3巻が逐次刊行された。連載時広告の入った頁が多かったため、貸本版ではコマを広げ広告スペースを消している部分が多い。また元広告部分に忍者解説コマを入れている場合もある。

第1巻カバー袖には新たに「忍術漫画の意義」というまえがき的な文章が収録される。第2巻最終頁にも連載時存在しなかった「後記」が追加されるが、これは連載打ち切りゆえのことわり書きである。

忍術漫画の意義 白土三平
忍術のおもしろさ、それは不可能なことも可能にするところにあると思います。従来忍術は、空想的な、不可思議なものとして扱われてきましたが、もっとリアルで、合理的な見方があるのではなかろうか?例えばどんなにあざやかな手品や奇術にも、種や仕掛があるように、忍術も、長い経験から生れた科学的知識と、血の出るような鍛錬によって悟得した秘術との総合的集積であるわけです。この「風の石丸」も、そうした意味からかいた忍術まんがで、ここに一個の玉をめぐって、多くの忍者や剣客が登場し、すさまじい闘争がくりひろげられるが、主人公石丸が、あくまでも正義と平和のために戦い抜く、その崇高な姿を充分に描いて見るつもりです。

※貸本「風の石丸」第1巻カバー袖より

後記
これで「風の石丸」はおわりました。長い間ご愛読くださったファンの皆さまに感謝いたします。しかし、物語がこのような終り方をしたのに、さぞご不満な方もいらっしゃることでしょう。「ね太郎は何のために出てきた?」「霞のおばばはどうなったのか」というようなお便りもきています。もっともなことです。初めこの物語は、もっと筋も広く、登場人物も多くでてきて、少年マガジン誌上に長くつづく予定だったのですが、いろいろな都合で完結を急ぐことになり、残念ながら筋を石丸だけにしぼって完結にいたしました。読者の皆さんに充分ご満足を与えることのできなかったことを、作者として、ふかくおわびします。(白土三平)

※貸本「風の石丸」第3巻P151より

※各巻裏表紙画(左から第一巻、第二巻、第三巻)
貸本版の欠落部分
貸本版では、かすみのおばばと牧十馬の戦いの結果がどうなったのか、またなぜ牧十馬が溺れていたのかが「読者のみなさんのしっているとおり……」(註:牧十馬のセリフ)と書いてはあるが、全くの不明になっている。 以下は欠落の8頁分だが、ここは五十鈴初登場のシーンでもある。復刻されたMSS「風の石丸 [貸本版]」だとP266とP267の間に入る部分であり、この連載第15回目扉(上に表示)はP266の場面、最後おばばが崖の上から覗いているのはP267の場面に対応する。 手塚治虫の「ロストワールド」を本歌取りしているので意図的に削除したのかもしれない。








※連載第15回目(P86-93)より