参考資料考
シートン動物記
「シートン動物記」はアーネスト・トンプソンシートン(Ernest Thompson Seton/1860年8月14日-1946年10月23日)による著作の総称。
詳しくはWikipedia「シートン動物記」に書いたので参照のこと。

まずは白土作品についてと「犬万」、そのあとに「シートン全集」までの単行本刊行詳細を書く。
白土の漫画化について
※連載「スプリングヒールドのきつね」全3回扉

第1話「フェニボンクの山猫」
 原題「The Boy and the Lynx」(1905年の単行本『Animal Heroes』が初出)
第2話「ウォスカと赤頭の子狼」
 原題「Shishoka / Wosca and her valiant cub」(1937年の単行本『Great Historic Animals / Mainly About Wolves』が初出)
第3話「スプリングフィールドの狐」
 原題「The Springfield Fox」(1898年の単行本『Wild Animals I Have Known』が初出)
第4話「ビリー」
 原題「Billy, the Dog That Made Good」(1916年の単行本『Wild Animal Ways』が初出)
第5話「灰色熊の伝記」
 原題「Wahb」(1900年の単行本『The Biography of A Grizzly』が初出)


白土は内山賢次訳の「シートン全集」(下に詳述)を基にし、そのうち幾つかを忠実に漫画化した。 第1-3話は雑誌「小学六年生」の1961年6月号から1962年3月号に発表。1961年12月、その第1-2話を貸本「シートン動物記1」として刊行している。 1962年8月、第3話に描き下ろしの第4話を含めた貸本「シートン動物記2」を刊行する。 1963年、白土はこれらと「サスケ」で第4回講談社児童まんが賞を受賞。受賞のとき白土は内山の家に行き賞金からお礼を渡し、お返しに腕時計を贈られている。賞金の残りは百科辞典の購入に使っている。 1962年末から1963年にかけての連載作品「死神少年キム」作中にキャラクターとしてシートンを登場させるなどし、1964年1月に貸本「灰色熊の伝記」全2巻を刊行している。

下に貸本「シートン動物記1」から、内山の文章を載せる。

「シートン動物記を漫画化するにあたりて」 内山賢次
シートンさんの動物ものがたりを、まん画家の白土三平さんの手で漫画ものがたりにつくられることになりました。シートンさんの作品が日本でそういうところまできた、と思うと、シートンさんの作品を日本のものにしてきた私には、そのあとがしのばれます。わたしがアメリカそだちのシートンさんの作品を一冊手にいれたのはおよそ四十年前、それを日本の本にしたのは二十四年前です。それからアメリカにいる友人にたのんで、シートンさんの本を古本であつめてもらい、ざっと二十年あまりかかって、あらかたあつめつくしました。それを長いあいだかかって一つ一つやくして、『動物記』という題にして、これまでいろいろの形でだしてきました。シートンさんには『動物記』という本はないのです。それはとにかく、どうしてシートンさんの本がこんなに日本で読まれるようになったのでしょう。それは、こういうふうの動物のほんとうの生活をかいた本がなかったこと、またわたしのやくした仕事を日本のいろいろの作家が心からしょうかいしてくださったことと、またそれよりもっと大きいのは日本の本を読むかたがたが、それとは知らずに、心のなかでこういう物語のできるのをまっていたことだと思います。だから、当時日本でだれひとり知らなかったシートンさんの作品をやくして、とうとう十九巻の全集としてしあげたのはわたしだけれど、それをそれまでにそだてあげたのは、けっしてわたしだけの手柄ではありません。社会のいろいろの力が知らず知らずにあつまってなしとげた仕事だと思います。そして、いま又白土さんの手で漫画ものがたりまでつくられるようになったのです。こういうことは、ただわたしの小さな仕事についてばかりではない。社会で何かが成功するには、その仕事をやった人だけの手柄だとうぬぼれたら、おかしなことでしょう。シートンさん動物作品はぜんぶで五十五篇あります。長いもの、短いものと、とりどりです。そのほかにも長い少年小説が三冊あります。どれもみなここにえがかれた物語にまけない、いやそれいじょうにすぐれたおもしろいものです。さいわいこの本にのった作品がみなさんに気にいっておもしろく、つぎつぎにあとの作品が漫画物語にしたてられるようになったら、うれしいことだと思います。ところで、ここで一つ、シートンさんがこういう動物ものがたりを書いた底にある心がまえをかきそえます。それは人間のまもるべき道徳の手本は、すべて動物にあるという考えです。そして、シートンさんはその道徳をただ頭からおしつけるりくつとしてでなく、動物の生活する姿のなかにそれをさぐりだしてえがいたということです。それについては、まだまだお話したいことがたくさんあるが、それはここではやめて、ただ一ことだけかきそえさせていただきます。
何物からも学ぼうとする者には どこにも学ぶものはある。
どうかこの動物記によって、なにか自分のものにするようお祈りしております。

※貸本単行本「シートン動物記1」(画:白土三平・原作:内山賢次/1961年12月8日発行/東邦漫画出版社)より
犬万(いぬまん)について
犬万は、白土作品「カムイ外伝」の第2話「飯綱落し」や、「サスケ」犬万(小学館文庫第6巻収録部分)などに登場する。 犬万についての記述が収録されているシートンの原本は、1937年の『Great Historic Animals/Mainly About Wolves』(歴史に残る動物たち/狼を中心として)。 該当の箇所は、内山賢次の邦訳本では以下に収録されている。全て同一文。

白揚社『動物記』第六巻(1938年) P322-323
白揚社『動物記』第四冊(1940年) P434-435
評論社『シートン全集』第8巻(1952年) P105-106
評論社『動物記-分冊版』第14巻(1952年) P107-108
角川文庫『動物記』第6巻(1959年) P71-72


「犬が保存している二、三の野性的習慣」より抄出
何故(これが謎のうちの謎なのだが)純種のよく育てられ、よく飼われて神々しい香につつまれている犬、そうだ天鵞絨(びろうど)のクッションの上に坐っているお蚕ぐるみの贅沢なチャウ犬まで、見つけだせるいちばんきたない腐った肉のなかに転げまわる機会をのがさず、何よりも腐敗した肉の鼻持ちのならない、胸のむかつく匂いを好むのだろう?
打擲(ちょうちゃく)しても、訓練しても、反対の刺激薬を用いても、いずれも何の効をも奏さず、この口にいいきれないような汚れに染まるくらい彼等の好きなことはない。それが我々人間に強い匂いだとしたら、犬の敏感な鼻には果してどれほどのものだろうか?それはいわば底抜け騒ぎだ、犬のどんちゃん酒盛りだ、「ちゃん公」の阿片泥酔だ。犬の蒙(こうむ)る反作用は、我々のとまったく異なるのに違いない。いや違うのだ。まったく違うので、人によってはそれを「のぼせ香り」と稱(しょう)するものもある。そしてミミズを瓶につめて一月じゅう天日にさらして置き、腐って、まったく胸のむかつくほどの腐敗の最後の状態までだらけこましてつくったその疑いものは、狼やその他鼻を頼りとする族に誘いとして用いられて不思議な成功を収める。この逆(のぼ)せかたを説明する唯一の知られているものは、それが何かのやり口で圧倒的な性の本能に働きかけるということである。

※単行本「動物記」第六巻(内山賢次訳/1938年12月15日発行/白揚社)より、ルビを追加し現代表記に改めた

ついでにほかの訳者によるものも載せる。

「イヌとオオカミ 情熱のかおり」より抄出
つぎになぞのなかのなぞともいうべき、イヌの習性について考えてみましょう。その習性は、動物のくさった死体などに、イヌが体をこすりつけようとすることです。また、イヌはくさった魚などの、ものすごいにおいが、大好きです。 これは、どんなに上品に育てたイヌでも同じですし、イヌをたたいて、そんなことをやめさせようとしても、むだです。 イヌは鼻がするどい動物ですから、わたしたちにはがまんできないような悪臭は、さぞいやなにおいに感じるだろうと思います。ところが、じっさいには、そういうにおいは、イヌにとっては、うっとりするような"情熱のかおり"らしいのです。 これについて今までに考えられている説明は、そのにおいは性本能をくすぐるにおいらしいということです。 ミミズを数ひき、ビンに入れて、一か月ほどほったらかしておくと、胸がむかつくような"情熱のかおり"ができあがります。するとオオカミやイヌは、このにおいに、ひきつけられてやってきます。

※単行本「シートン動物記 6」(藤原英司訳/1988年3月18日発売/集英社)より

さて、実際の犬の反応はどうなのだろう。忍風カムイ外伝ファンクラブ会誌「疾風」第5号内に、犬万を作成した旨の投稿がある。

「じっけんしました…」
カムイ外伝「第2話」で「犬万」の事が出てきますね。実は、私去年の夏休みの理科自由研究で、その事について実験してみたんです。田んぼやどろの中をひっくり返してミミズを採り、どろだらけのミミズを洗おうとザルの中に入れ、ジャブジャブやってると、ザルのめからミミズが出ては又入り、すんごくのびるんです。う〜〜気持ちわる〜〜。ともかくも1日で70匹ぐらいのミミズをコカ・コーラの缶のフタをとったものに入れ、腐らせてゆきました。出よう、出ようとしてはいのぼってくるのです。一匹、一匹それを棒でおとしながら、目に涙がたまってきました。じわじわなぶり殺しにしていくなんて…。夏の晴天が続き、1週間もすると、どろどろの液状になっていました。においのひどい事、ひどい事!もう言い表わせないほどいやなにおいなのです。隣の犬「コロ」に協力してもらい、かがせてみたんです。−すると−予想に反して、コロはちょっと不思議そうな顔をし、やがてだんだんと退いてゆきました。いやがってるみたいなのです。これにはがっかりしました。丸っきし裏をかかれた感じです。と…早くいうならば大失敗なのであります。(ごめんね、ミミズちゃん…)―それでも理科の先生は、ほめてくれました。「よくやった。」と…。

会誌「疾風」第5号(1977年8月発行)内「イケンのページ」より、会員番号及び名前は省略した

マタタビはおもににオス猫に効き、仔猫に全く効かない性的なフェロモンであり、また野生の猫には効くが飼い猫には効かない場合が多い。それと同じように犬万の効く効かないも個体差があるように思われる。 シートンのいうミミズ(北アメリカ大陸)と日本のミミズの違いか、または日本のミミズも種類が数多いので、探せばその一部には求めるものがいるのかもしれない。 キノコ・カエルの分泌物・大麻の種類によって幻覚作用を起こすものと起こさないものがあるように、犬万ミミズもミミズ全体の中のほんの一握りの種なのかもしれない。いまだに科学的には謎となっている。 身に付いた腐った臭いは、自身が近い過去に獲物を捕まえたという証明であり、それを嗅ぎつけたメスが遠くから寄ってくるステータスの名残なのではないかと思う。
「シートン全集」刊行まで
翻訳家で弓道家の内山賢次(1889年9月20日-1971年12月28日)所有のシートン第一作品集が平岩米吉の目にとまり、内山は1935年、その邦訳を平岩主催の『動物文学』誌上に発表する。 これがシートン文学の日本初出である。それまで日本人はほとんど誰もシートンについて知らなかった。 内山は1937年6月から1938年12月にかけて、単行本『動物記』全6巻を白揚社から刊行する。「動物記」という題名は、単行本の出版元である白揚社を経営する中村徳二郎が(ファーブルの「昆虫記」に合わせ)付けた。 内山は「動物物語」だけではなく研究者、ボーイスカウト運動家としてのシートンをも日本に広めたかったため、これに反対したが叶わなかった。この題名からの誤解は現在まで続いている。

「動物記」はまず1937年から1938年にかけて全6巻が刊行された。以下全て、総頁数は奥付の頁までのもの。

『動物記』第一巻(1937年6月15日発行/白揚社/1円50銭/全351頁)
1- 「銀の星 -ある鴉の話-」
2- 「ロボー -カランパウの狼王-」
3- 「ぎざ耳坊主 -綿尾兎の話-」
4- 「ビンゴ -私の飼った犬の話-」
5- 「疵面(きず)の大将とその女房 -スプリングフィールドの狐の話-」
6- 「諾足(だくあし)のムスタング馬」
7- 「頑公(Wully) -孤犬の話-」
8- 「赤襟兄い -ドン渓谷の鷓鴣(シャコ)の話-」
9- 「サンド・ヒル牡鹿の足跡」

『動物記』第二巻
1- 「峰の大将 -クートネー山の牡羊-」
2- 「街の吟遊詩人 -牡雀の冒険物語-」
3- 「ジョンニー熊 -イャローストン公園の仔熊-」
4- 「母さん小鴨と陸の旅路」
5- 「ちゃん公 -仔犬の成長-」
6- 「カンガルー鼠」
7- 「ティトオ -賢くなったコヨーテの話-」
8- 「何故山雀(ヤマガラ)は年に一度気が狂ふか」

『動物記』第三巻(1938年2月15日発行/白揚社/1円50銭/全333頁)
1- 「灰色熊物語」
2- 「アルノウクス -ある伝書鳩の記録-」
3- 「バッドランドのビリー -勝利を得た狼-」
4- 「少年と山猫」
5- 「小び助軍馬 -ジャック兎の経歴-」
6- 「ウィニペグの狼」

『動物記』第四巻(1938年7月19日発行/白揚社/1円50銭/全283頁)
1- 「熊王物語 -タラク山の大熊-」
2- 「銀狐物語」

『動物記』第五巻
1- 「墨栗 -無法者の馬の話-」
2- 「泡(あぶく)ん坊 -剃背豚の生涯と冒険-」
3- 「ウェー・アッチャ -キルダー小川の浣熊-」
4- 「ビリー -立派になった犬の話-」
5- 「裏街にゃん子 -ある猫の生涯-」
6- 「ぱく公 -あるブル・テリヤーの話-」

『動物記』第六巻(1938年12月15日発行/白揚社/1円50銭/全357頁)
1- 「ウォスカと勇敢な仔狼 -白色の母狼-」
2- 「チリンガムの牡牛 -イギリスの野牛-」
3- 「マリエっ子と狼」
4- 「自動車踏段上の狼」
5- 「「にんじん」物語」
6- 「狼と原始的法律」
7- 「リンコーン -夜の叫び-」
8- 「ハンクとジェフ」
9- 「パドレークと最後のアイルランド狼」
10- 「鬼畜生 -ヂェヴォーダンの鬼狼-」
11- 「クルートー -フランスの狼王-」 ※株っ尾大王
12- 「豹の恋人」
13- 「馴飼獣の野性的習慣」


次に1939年から1940年にかけて4冊にまとめ再刊行。1944年にはもう1冊追加し、全5巻になる。

『動物記』第一冊(1939年11月15日発行/白揚社/2円50銭/全435頁)
1- 「ロボー -カランパウの狼王-」 (旧第一巻-2)
2- 「銀の星 -ある鴉の話-」 (旧第一巻-1)
3- 「ぎざ耳坊主 -綿尾兎の話-」 (旧第一巻-3)
4- 「ビンゴ -私の飼った犬の話-」 (旧第一巻-4)
5- 「疵面の大将とその女房 -スプリングフィールドの狐の話-」 (旧第一巻-5)
6- 「諾足のムスタング馬」 (旧第一巻-6)
7- 「頑公(Wully) -孤犬の話-」 (旧第一巻-7)
8- 「赤襟兄い -ドン渓谷の鷓鴣の話-」 (旧第一巻-8)
9- 「灰色熊物語」 (旧第三巻-1)

『動物記』第二冊(1939年12月10日発行/白揚社/2円50銭/全521頁)
1- 「峰の大将 -クートネー山の牡羊-」 (旧第二巻-1)
2- 「街の吟遊詩人 -牡雀の冒険物語-」 (旧第二巻-2)
3- 「ジョンニー熊 -イャローストン公園の仔熊-」 (旧第二巻-3)
4- 「母さん小鴨と陸の旅路」 (旧第二巻-4)
5- 「ちゃん公 -仔犬の成長-」 (旧第二巻-5)
6- 「カンガルー鼠」 (旧第二巻-6)
7- 「ティトオ -賢くなったコヨーテの話-」 (旧第二巻-7)
8- 「何故山雀は年に一度気が狂ふか」 (旧第二巻-8)
9- 「サンド・ヒル牡鹿の足跡」 (旧第一巻-9)
10- 「熊王物語 -タラク山の大熊-」 (旧第四巻-1)

『動物記』第三冊(1940年3月1日発行/白揚社/2円50銭/全501頁)
1- 「裏街にゃん子 -ある猫の生涯-」 (旧第五巻-5)
2- 「ぱく公 -あるブル・テリヤーの話-」 (旧第五巻-6)
3- 「アルノウクス -ある伝書鳩の記録-」 (旧第三巻-2)
4- 「バッドランドのビリー -勝利を得た狼-」 (旧第三巻-3)
5- 「少年と山猫」 (旧第三巻-4)
6- 「小び助軍馬 -ジャック兎の経歴-」 (旧第三巻-5)
7- 「ウィニペグの狼」 (旧第三巻-6)
8- 「墨栗 -無法者の馬の話-」 (旧第五巻-1)
9- 「泡ん坊 -剃背豚の生涯と冒険-」 (旧第五巻-2)
10- 「ウェー・アッチャ -キルダー小川の浣熊-」 (旧第五巻-3)
11- 「ビリー -立派になった犬の話-」 (旧第五巻-4)

『動物記』第四冊(1940年4月25日発行/白揚社/2円50銭/全469頁)
1- 「銀狐物語」 (旧第四巻-2)
2- 「ウォスカと勇敢な仔狼 -白色の母狼-」 (旧第六巻-1)
3- 「チリンガムの牡牛 -イギリスの野牛-」 (旧第六巻-2)
4- 「マリエっ子と狼」 (旧第六巻-3)
5- 「自動車踏段上の狼」 (旧第六巻-4)
6- 「「にんじん」物語」 (旧第六巻-5)
7- 「狼と原始的法律」 (旧第六巻-6)
8- 「リンコーン -夜の叫び-」 (旧第六巻-7)
9- 「ハンクとジェフ」 (旧第六巻-8)
10- 「パドレークと最後のアイルランド狼」 (旧第六巻-9)
11- 「鬼畜生 -ヂェヴォーダンの鬼狼-」 (旧第六巻-10)
12- 「クルートー -フランスの狼王-」 (旧第六巻-11)
13- 「豹の恋人」 (旧第六巻-12)
14- 「馴飼獣の野性的習慣」 (旧第六巻-13)

『動物記』第五冊(1944年2月20日発行/白揚社/3円20銭/全265頁)
1- 「北氷草原紀行」 ※全四十八章構成


1941年には「シートン自叙伝」(白揚社)と「シートン動物手帖」(三笠書房)を、1942年に「りす物語」(フタバ書院成光館)を追加で刊行。 生前のシートンやその夫人に直接資料的援助を受けた内山は、新たに訳したものを追加し、戦後の1951年6月から1953年12月にかけて「シートン全集」全19巻を刊行した。

第1巻「動物記1/私の知る野生動物」(1951年6月30日発行/評論社/300円/全369頁)
1- ロボー -カランポーの王様- (旧第一巻-2/第一冊-1)
2- 銀の星 -ある鴉の話- (旧第一巻-1/第一冊-2)
3- ぎざ耳坊主 -綿尾兎の話- (旧第一巻-3/第一冊-3)
4- ビンゴ -私の犬の話- (旧第一巻-4/第一冊-4)
5- スプリングフィールドの狐 (旧第一巻-5/第一冊-5)
6- だくのマスタング (旧第一巻-6/第一冊-6)
7- ワリー -孤犬の話- (旧第一巻-7/第一冊-7)
8- 赤襟兄い -ドン谷山鶉(うずら)の話- (旧第一巻-8/第一冊-8)

第2巻「動物記2/狩られるものの生活」(1951年7月30日発行/評論社/300円/全341頁)
1- 峰の大将 -クートネー山の牡羊- (旧第二巻-1/第二冊-1)
2- 街の吟遊詩人 -牡雀の冒険物語- (旧第二巻-2/第二冊-2)
3- ジョンニー熊 -イェローストーン公園の子熊- (旧第二巻-3/第二冊-3)
4- 母さん小鴨と陸の旅路 (旧第二巻-4/第二冊-4)
5- ちゃん公 -子犬の成長- (旧第二巻-5/第二冊-5)
6- カンガルー鼠 (旧第二巻-6/第二冊-6)
7- ティトオ -賢くなったコヨーテの話- (旧第二巻-7/第二冊-7)
8- なぜ山雀は年に一度気が狂うか (旧第二巻-8/第二冊-8)

第3巻「動物記3/サンド・ヒル牡鹿の足跡」(1951年8月30日発行/評論社/300円/全335頁)
1- サンド・ヒル牡鹿の足跡 (旧第一巻-9/第二冊-9)
2- 熊王物語 -タラク山の大熊- (旧第四巻-1/第二冊-10)
3- 銀狐物語 -ゴールダー・タウンのドミノ狐- (旧第四巻-2/第四冊-1)

第4巻「動物記4/動物英雄伝」(1951年9月30日発行/評論社/300円/全379頁)
1- 裏街にゃん子 (旧第五巻-5/第三冊-1)
2- アルノウ -ある巣帰り鳩の記録- (旧第三巻-2/第三冊-3)
3- バッドランドのビリー -勝利を得た狼- (旧第三巻-3/第三冊-4)
4- 少年と大山猫 (旧第三巻-4/第三冊-5)
5- ちび助軍馬 (旧第三巻-5/第三冊-6)
6- ぱく坊 -あるブル・テリヤーの話- (旧第五巻-6/第三冊-2)
7- ウィニペグ狼 (旧第三巻-6/第三冊-7)
8- 白馴鹿の伝説

第5巻「動物記5/灰色熊の伝記」(1951年11月10日発行/評論社/330円/全281頁)
1- 灰色熊の伝記 (旧第三巻-1/第一冊-9)
2- 墨栗 -無法者の馬の話- (旧第五巻-1/第三冊-8)
3- あぶくん坊 -剃刀背野豚の生涯と冒険- (旧第五巻-2/第三冊-9)
4- ウェー・アッチャ -キルダー小川の浣熊- (旧第五巻-3/第三冊-10)
5- ビリー -立派になった犬の話- (旧第五巻-4/第三冊-11)

第6巻「動物記6/安住の動物」(1951年11月30日発行/評論社/330円/全319頁)
※第6巻は三笠書房刊「動物手帖」(1941年)の改訂版。

第7巻「動物記7/北氷草原紀行」(1951年12月31日発行/評論社/330円/全369頁)
※第7巻は白揚社刊「動物記」第五冊(1944年)の改訂版。

第8巻「動物記8/歴史上の大動物」(1951年12月31日発行/評論社/330円/全419頁)
1- ウォスカと勇敢な子狼 -白色の母狼- (旧第六巻-1/第四冊-2)
2- チリンガムの牡牛 (旧第六巻-2/第四冊-3)
3- マリエっ子と狼 (旧第六巻-3/第四冊-4)
4- 自動車踏段の狼 (旧第六巻-4/第四冊-5)
5- 飼いならし獣の野性的習慣 (旧第六巻-13/第四冊-14)
6- パドレイクと最後のアイルランド狼 (旧第六巻-9/第四冊-10)
7- リーンコーン -夜の叫び- (旧第六巻-7/第四冊-8)
8- 狼と原始的法律 (旧第六巻-6/第四冊-7)
9- 「にんじん」物語 (旧第六巻-5/第四冊-6)
10- チッケエリー -赤栗鼠の生活のたった一つの冒険-
11- 女熊
12- 愛するものたちと輝くもの -歌う森男の語り草-
13- 鼠とがらがら蛇 -動物の個性の研究-
14- ディポオ -砂漠の妖精-
15- ハンクとジェフ (旧第六巻-8/第四冊-9)
16- 鬼畜生 -ジェヴォーダンの鬼狼- (旧第六巻-10/第四冊-11)
17- 株つ尾大王 -フランスの狼王- (旧第六巻-11/第四冊-12)
18- 豹の恋人 (旧第六巻-12/第四冊-13)
19- だれが英雄であったか?

第9巻「二人の小さな野蛮人」上巻(1952年7月25日発行/評論社/330円/全323頁)
第10巻「二人の小さな野蛮人」下巻(1952年8月25日発行/評論社/330円/全423頁)

第11巻「森のロルフ」上巻(1952年5月25日発行/評論社/330円/全321頁)
第12巻「森のロルフ」下巻(1952年6月25日発行/評論社/330円/全333頁)

第13巻「シダー・マウンテンの説教師」上巻(1952年11月25日発行/評論社/330円/全319頁)
第14巻「シダー・マウンテンの説教師」下巻(1952年12月25日発行/評論社/330円/全291頁)

第15巻「自叙伝」上巻(1953年1月30日発行/評論社/330円/全385頁)
第16巻「自叙伝」下巻(1953年3月30日発行/評論社/330円/全347頁)
※第15-16巻は白揚社刊「シートン自叙伝」(1941年)の改訂版。

第17巻「森の神話と寓話」(1953年6月10日発行/評論社/380円/全419頁)
1- 森の神話と寓話
2- 森の物語

第18巻「キャンプ・ファイヤ物語」(1953年7月30日発行/評論社/330円/全391頁)
1- キャンプ・ファイヤ物語
2- 赤人の福音書
3- 十誡の博物学

別巻「動物記9/英雄犬サンタナ」(1953年12月25日発行/評論社/330円/全325頁)
1- サンタナ -フランスの英雄犬-
2- 旗尾リス物語
3- 北極狐の伝記 -雪の子カタグ-
※収録の「旗尾リス物語」はフタバ書院成光館刊「りす物語」(1942年)の改訂版。


この刊行中、廉価な『動物記-分冊版』全15巻も刊行されている。内容は『シートン全集』第8巻(動物記8)までの内容。その後、『動物記-普及版』全15巻も刊行されるが、これは分冊版と同じもの。なぜか発行日がバラバラになっている。

『動物記-分冊版』第1巻(1952年2月20日発行/評論社/150円)
『動物記-分冊版』第15巻(1952年5月15日発行/評論社/150円)

『動物記-普及版』第1巻(1955年8月30日発行/評論社/150円)
『動物記-普及版』第11巻(1956年5月20日発行/評論社/100円)
『動物記-普及版』第15巻(1954年11月30日発行/評論社/100円)


次に、新潮社から『新訳シートン動物記』全8巻が発行されるが、これは物語を幾つか選んで収録(抄録)したもの。その後、角川書店から角川文庫『動物記』全9巻も刊行されるが、「シートン全集」収録のものが全て再刊行されることはなかった。

『新訳シートン動物記』第1巻(1956年10月10日発行/新潮社/230円/全271頁)
角川文庫『動物記』第1巻(1958年12月20日発行/角川書店/90円/全239頁)