変身
作品解題

※初出扉、貸本「忍法秘話」第12号再掲載時扉、初出誌中扉

貸本「忍豪ブック 忍風」第3号(1960年4月下旬発行/三洋社)に発表された作品。全34枚。 短編集「忍豪ブック 忍風」は貸本「忍者武芸帳」第1巻に続いて三洋社から発行された。 白土は第3号の表紙画、中扉絵、色絵14枚付きの巻頭作品を手掛けている(第1・2号のそれらは別の収録作家による)。 この貸本の収録作品は「変身」のほかに「右腕殺法」(渡辺美千太郎)、「妖刀村正」(つげ義春)、「荒木又右衛門」(永島慎二)、「忍者飛龍」(東田健二)となっている。 単行本の扉絵は、1968年GC「忍法秘話」第2巻収録時に描き下ろされ、以降すべて同じ。

この作品は1992年の小学館叢書版以降、一部のセリフが変えられている。 拷問中に2度出てくる「狂人のまね」が「へんなまね」に、最後の文章に2度出てくる「狂人の娘」が「変人の娘」になっている。 別の作品になるが、2005年の「カムイ伝全集」第4巻P197では「きちがいは」が「狂人は」に変えられている。 よって厳密でないのだとは思うが、時代の枠に合わせて作品が翻弄させられているわかりやすい例だ。
原稿の変遷
作品「変身」は次に収録された1964年の貸本「忍法秘話」第12号で、扉頁含む全頁が描き直される。 そして1967年の「白土三平劇場」以降のものはややこしいので下に図示(色分けで表示)する。 描き直しといっても内容に変化は無い。

1960年の初出
 扉 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34

1964年の貸本「忍法秘話」第12号での描き直し版
 扉 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34

1967年の「白土三平劇場」以降のもの全て(新たに「7」と「8」の2枚が描き直されている)
 扉 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34

描き直し版発表後に全原稿が発見されたのだろう。14枚目までに描き直し後の原稿を使用しているのは、初出時のカラー原稿部分なのでおかしくはない。 初出版では時代的に原稿に直接色を塗っていたと思われ、描き直し版は原稿をコピーしたものに色を付けていたため、モノクロ版としての再掲載が可能だからだ。 疑問があるのは7・8枚目の新たな描き直しと、19枚目の描き直し原稿使用である。 原稿の痛みからという可能性もあるが、初出誌P123の「新人原稿募集の頁」に「尚 掲載の方には白土三平先生の原画を送ります」と書いてあるので、初出の一部原稿は発行社によって各地へ散ってしまった可能性もある。

文春文庫ビジュアル版「幻の貸本マンガ大全集」(1987年3月10日発行/文藝春秋社)に収録されているものは、本のタイトルから初出時のものかと思いきや、 1973年の「白土三平ベスト忍法劇画」からのものであった。作品末には「初出誌不明」との記載がある。