貸本「忍法秘話」
概要
1963年から1965年まで刊行されたA5判貸本全22巻。青林堂(加藤書店)発行。各号巻頭8頁カラー。表紙は白土三平が描き下ろし、巻頭も全て白土作品。 その内、「変身」と「はごろも」全2回のみが再掲載作品。 全体として主に白土主催の赤目プロダクションメンバーの作品や投稿作品が載り、小島剛夕は「諏訪栄」、平田弘史は「加治一生」というペンネームで白土の画風に似せ作品を発表している。

全22巻以外に別冊として、諏訪栄作品のみ収録の「瘴気」(1964年3月31日発行)「忍法かげろう」(1964年11月30日発行)計2冊と、白土作品のみ収録の「白土三平傑作選集」(1965年1月15日発行)が発行された。 「白土三平傑作選集」は「月刊漫画ガロ」の創刊号から第3号までの返品本を分解し製本し直したものなのでサイズが異なりB5判サイズで発行された。

掲載の白土作品名一覧 枚数 脱稿日 掲載号 備考
異変401963年08月第1号 (1963年09月10日発行/220円)初出
子啄木鳥401963年09月15日第2号 (1963年10月10日発行/220円)初出
やまかし491963年10月15日第3号 (1963年11月10日発行/220円)初出
夢幻401963年11月21日第4号 (1963年12月10日発行/220円)初出
紛忍481964年01月20日第5号 (1964年01月20日発行/220円)初出
やませ481964年01月28日第6号 (1964年03月01日発行/220円)初出
やませ 第ニ部481964年02月20日第7号 (1964年04月01日発行/220円)初出
目無し 第一回201964年04月26日第8号 (1964年06月15日発行/220円)初出
目無し 第二回201964年04月27日第9号 (1964年06月30日発行/220円)初出
目無し 第三回201964年07月17日第10号 (1964年08月15日発行/220円)初出
目無し 最終回401964年08月16日第11号 (1964年09月30日発行/220円)初出
変身341960年04月第12号 (1964年11月01日発行/250円)再掲載(全原稿描き直し)
はごろも 第一部321960年03月第13号 (1964年12月発行/250円)再掲載(全原稿描き直し)
羽衣 第ニ部501960年03月第14号 (1965年01月15日発行/250円)再掲載(最終頁のみ描き直し)
ガロの復活321965年01月14日第15号 (1965年01月30日発行/250円)初出
ガロの復活 第二回 ギバチ321965年02月12日第16号 (1965年03月05日発行/250円)初出
ガロの復活 第三回 他心通381965年02月02日第17号 (1965年04月05日発行/250円)初出
ガロの復活 第四回 言霊241965年03月24日第18号 (1965年05月05日発行/250円)初出
ガロの復活 最終回 ガロの宿321965年03月26日第19号 (1965年06月05日発行/250円)初出
無風伝 第一回 野兎斬り 1401965年06月04日第20号 (1965年07月05日発行/250円)初出
無風伝 第二回 野兎斬り 2401965年06月22日第21号 (1965年08月10日発行/250円)初出
無風伝 第三回 野兎斬り 3401965年07月30日第22号 (1965年09月10日発行/250円)初出
ここで初出の作品のうち「子啄木鳥」「やまかし」「紛忍」と、「大摩のガロシリーズ」(「やませ」全2回および「ガロの復活」全5回)はのちにコマを切り貼りし四段組に改稿したものが現在に至っている。 下は「子啄木鳥」「やまかし」「紛忍」の四段組改稿版扉。


※「別冊少年マガジン」夏休みおたのしみ特大号(1966年8月1日発行)、「少年」1966年お正月大増刊号(1965年12月発行)、「週刊少年マガジン」1966年3月13日号(10号)より
第1号 (1963年9月10日発行/220円)


「異変」白土三平(P1-P40) ※1963年8月
「秘術」諏訪栄(P41-P102) ※1963年8月10日
「毒」楠勝平(P103-P151)

掲載の白土作品は「異変」。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1963年8月」と入る。白土はこの作品をを描くために家の中でたくさんのカエルを飼い、周囲を驚かせた。このエピソードは長井勝一が自伝「「ガロ」編集長」(P116)や「少年漫画劇場」第8巻の寄稿文に書いているが、同じことを白土の弟・岡本真も「平凡パンチ」1967年3月6日号や「週刊ポスト」1978年10月27日号の記事内で語っている。
第2号 (1963年10月10日発行/220円)


「子啄木鳥」白土三平(P1-P40) ※1963年9月15日
「求道」諏訪栄(P41-P87) ※1963年9月12日
「内職忍者」楠勝平(P88-P136) ※1963年9月11日
「忍者無芸帳」水木しげる(P137-P159) ※1963年9月13日

掲載の白土作品は「子啄木鳥」。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1963年9月15日」と入る。
第3号 (1963年11月10日発行/220円)


「やまかし」白土三平(P1-P49) ※1963年10月15日
「化性のもの」諏訪栄(P50-P99)
「三人の詐欺師」楠勝平(P100-P145) ※1963年10月

掲載の白土作品は「やまかし」。カラー頁8枚を含む全49枚。作品末に「1963年10月15日」と入る。
第4号 (1963年12月10日発行/220円)


「夢幻」白土三平(P1-P40) ※1963年11月21日
「腰抜け」諏訪栄(P41-P90) ※1963年11月20日
「肥」楠勝平(P91-P148) ※1963年11月20日

掲載の白土作品は「夢幻」。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1963年11月21日」と入る。
第5号 (1964年1月20日発行/220円)


「紛忍」白土三平(P1-P48) ※1964年1月20日
「秘剣」諏訪栄(P49-P110) ※1963年12月23日
「赤い雨」楠勝平(P111-P136) ※1963年12月21日

掲載の白土作品は「紛忍」。カラー頁8枚を含む全48枚。作品末に「1964年1月20日」と入る(発行日と同日)。
第6号 (1964年3月1日発行/220円)


「やませ」白土三平(P1-P48) ※1964年1月28日
「石塔」楠勝平(P49-P95) ※1964年
「結」松浦あけみ(P97-P155) ※1964年1月7日

掲載の白土作品は「やませ」。カラー頁8枚を含む全48枚。作品末に「1964年1月28日」と入る。
第7号 (1964年4月1日発行/220円)


「やませ 第ニ部」白土三平(P1-P48) ※1964年2月20日
「忍者は一度勝負する」水木しげる(P49-P79)
「猿」松山善一(P80-P119) ※1964年3月
「死力」いばら美喜(P120-P147) ※1964年3月18日

掲載の白土作品は「やませ」の第ニ部。カラー頁8枚を含む全48枚。作品末に「1964年2月20日」と入る。
第8号 (1964年6月15日発行/220円)


「目無し 第一回」白土三平(P1-P20) ※1964年4月26日
「しょうばいしょうばい」楠勝平(P21-P39) ※1964年4月
「ほとけの善兵衛さん」楠勝平(P40-P56) ※1964年4月
「忍法屁話」水木しげる(P57-P76)
「陰に棲む者」諏訪栄(P77-P136)

掲載の白土作品は「目無し」の第一回目。カラー頁8枚を含む全20枚。作品末に「1964年4月26日」と入る。
第9号 (1964年6月30日発行/220円)


「目無し 第二回」白土三平(P1-P20) ※1964年4月27日
「散りぬ」いばら美喜(P21-P50)
「雷石」水木しげる(P51-P80)
「仇討ち残酷紀」おくだ竜也(P81-P120)
「稲荷繁昌記」楠勝平(P121-P159) ※1964年5月

掲載の白土作品は「目無し」の第二回目。カラー頁8枚を含む全20枚。作品末に「1964年4月27日」と入る。
第10号 (1964年8月15日発行/220円)


「目無し 第三回」白土三平(P1-P20) ※1964年7月17日
「三匹の剣士」諏訪栄(P21-P83) ※1964年6月10日
「怪忍」水木しげる(P84-P105)
「地獄」楠勝平(P106-P148) ※1964年7月

掲載の白土作品は「目無し」の第三回目。カラー頁8枚を含む全20枚。作品末に「1964年7月17日」と入る。
第11号 (1964年9月30日発行/220円)


「目無し 最終回」白土三平(P1-P40) ※1964年8月16日
「ぬけ忍」諏訪栄(P41-P87)
「聖なる輪」水木しげる(P88-P109)
「遭難」楠勝平(P110-P149)

掲載の白土作品は「目無し」の最終回。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1964年8月16日」と入る。 くノ一としてではなく、最後に不可能とされる女忍者の道を選んだスガル。内容に即しているとはいえ、貸本単行本の表紙に少女の裸体、さらに経血までを画き入れてしまう発想に驚く。 この作品を書き終えた直後に「カムイ伝」の第一話を書き出している。

第12号 (1964年11月1日発行/250円)



「変身」白土三平(P1-P34)
「太郎稲荷」水木しげる(P35-P56)
「柘植ノ大八」小山春夫(P57-P96)
「紅蓮の罠」楠勝平(P97-P167)

掲載の白土作品は「変身」。カラー頁8枚を含む全34枚。1960年4月作品の再掲載。再掲載とは言っても全頁描き直している(詳細)。
第13号 (1964年12月発行/250円)



「はごろも 第一部」白土三平(P1-P32)
「ライバル」水木しげる(P33-P59)
「馬鹿な話し」楠勝平(P60-P89)
「忍者のぶ」杉山明(P90-P121)
「秘伝狐落し」どや一平(P122-P151)

掲載の白土作品は「はごろも」の第一部。カラー頁8枚を含む全32枚。1960年3月作品の再掲載。再掲載とは言っても全頁描き直している。
第14号 (1965年1月15日発行/250円)



「羽衣 第ニ部」白土三平(P1-P52)
「摩利の不動」小山春夫(P53-P92)
「ハト」水木しげる(P93-P119) ※1964年12月15日
「一匹狼 前編」おがわあきら(P120-P159)

掲載の白土作品は「羽衣」の第ニ部。カラー頁8枚を含む全52枚。1960年3月作品の再掲載。最終頁のみを新たに描き直している。 これは最終頁のイラストのみを、貸本「別冊忍風」第2集(1960年7月/三洋社)の目次頁に彩色の上再使用したことが原因だろう。
第15号 (1965年1月30日発行/250円)


「ガロの復活 第一回」白土三平(P1-P32) ※1965年1月14日
「秘伝狐落し 第二回」どや一平(P33-P62)
「仇」楠勝平(P63-P88)
「河童」水木しげる(P89-P118) ※1965年1月7日
「一匹狼 後編」おがわあきら(P120-P159) ※1964年12月21日

掲載の白土作品は「ガロの復活」の第一回目。カラー頁8枚を含む全32枚。作品末に「1965年1月14日」と入る。 白土作品のみ珍しいことにセリフ内の文字が全て手書きになっている。写植が間に合わなかったのだろうか。
第16号 (1965年3月5日発行/250円)


「ガロの復活 第二回 ギバチ」白土三平(P1-P32) ※1965年2月12日
「空想石」水木しげる(P33-P62)
「陸ピラニヤ」水木しげる(P63-P76)
「仇 第二話」楠勝平(P77-P121) ※1965年2月
「鬼婆」月足正憲(P122-P131)
「落魄の侍」月足正憲(P132-P155)

掲載の白土作品は「ガロの復活」の第二回目。カラー頁8枚を含む全32枚。作品末に「1965年2月12日」と入る。
第17号 (1965年4月5日発行/250円)


「ガロの復活 第三回 他心通」白土三平(P1-P38) ※1965年2月2日
「未完成交響楽」水木しげる(P39-P68) ※1965年3月9日
「邪道」佐馬一平(P69-P102)
「百姓ザムライ」おがわあきら(P103-P132) ※1965年2月26日
「刺客」旭こうじ(P133-P157) ※1965年1月4日

掲載の白土作品は「ガロの復活」の第三回目。カラー頁8枚を含む全38枚。作品末に「1965年2月2日」と入る。 前号の「ギバチ」と脱稿日が前後しているが、正しい日付なのか「3月2日」を間違えて「2月2日」として載せてしまったのかわからない。
第18号 (1965年5月5日発行/250円)


「ガロの復活 第四回 言霊」白土三平(P1-P24) ※1965年3月24日
「空のサイフ」水木しげる(P25-P54) ※1965年4月15日
「敵」難波二十三(P55-P79) ※1965年3月
「奇剣鶴々一足」月宮よしと(P80-P111)
「邪剣」月足正憲(P112-P154)

掲載の白土作品は「ガロの復活」の第四回目。カラー頁8枚を含む全24枚。作品末に「1965年3月24日」と入る。
第19号 (1965年6月5日発行/250円)


「ガロの復活 最終回 ガロの宿」白土三平(P1-P32) ※1965年3月26日
「奇剣鶴々一足 最終回」月宮よしと(P33-P50)
「ろくでなし」水木しげる(P51-P80) ※1965年5月15日
「幸せな時間」平乃治人(P81-P110) ※1965年3月
「影忍」月足正憲(P111-P157)

掲載の白土作品は「ガロの復活」の最終回。カラー頁8枚を含む全32枚。作品末に「1965年3月26日」と入る。
第20号 (1965年7月5日発行/250円)


「無風伝 第一回 野兎斬り 1」白土三平(P1-P40) ※1965年6月4日
「金太とピン子」水木しげる(P41-P70)
「雲を斬る」杉山あきら(P71-P100)
「毛虫丸旅日記」上野みちる(P101-P115)
「喜助の最后」(P116-P129)
「死にたい」平乃治人(P130-P159) ※1965年5月

掲載の白土作品は「無風伝」の第一回目。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1965年6月4日」と入る。
第21号 (1965年8月10日発行/250円)


「無風伝 第二回 野兎斬り 2」白土三平(P1-P40) ※1965年6月22日
「金太とピン子 第二回 狸のポン太」水木しげる(P41-P70)
「忍者の果て」小川研一(P71-P102) ※1965年7月
「下忍3匹」鬼童譲二(P103-P142) ※1965年6月

掲載の白土作品は「無風伝」の第二回目。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1965年6月22日」と入る。
第22号 (1965年9月10日発行/250円)


「無風伝 第三回 野兎斬り 3」白土三平(P1-P40) ※1965年7月30日
「新釈 武士道」加治一生(P41-P70) ※1965年8月12日
「蕎麦の怨 前編」平乃治人(P71-P103)
「壷」にしむらしんいち(P104-P133)

掲載の白土作品は「無風伝」の第三回目。カラー頁8枚を含む全40枚。作品末に「1965年7月30日」と入る。第23号が発刊されなかったため「無風伝」は未完の作品になった。
青林堂
忍法秘話別冊
白土三平傑作選集
発行 : 1965年1月15日
定価 : 300円
全300頁
目次
「傀儡がえし」「無名」「無三四」 ※「月刊漫画ガロ」第2号より
「スガルの死」「鬼」「妙活」「幻の犬」 ※「月刊漫画ガロ」第3号より
「ざしきわらし」「赤い竹」「陽忍」「くぐつ」 ※「月刊漫画ガロ」創刊号より
妥協を排す孤高の理想家/影丸
目次頁などなく、表紙・裏表紙以外は上に書いたもののみの内容。「月刊漫画ガロ」創刊号から第3号までの返品本を分解し、その中の計11白土作品をつなぎ合わせた本。 よって頁数(ノンブル)は繋がっていない。「妥協を排す孤高の理想家」もガロ創刊号や第二号に載ったものの再掲載。3冊ともに巻頭カラーが4枚ずつあるので、カラー頁は計12枚。 表紙は「陽忍」初出時(「週刊少年サンデー」1963年4月7日号)カラー扉絵の流用。