霧の千丸
作品解題

※連載全6回扉頁(連載第2回目のものは付録本表紙)

白土初の雑誌連載作品。全6回。

ある山中、霧隠や猿飛たち豊臣の忍者は真田幸村の命令で家康を狙う爆弾「竜煙の玉」の秘密実験をしていた。運悪く、その毒ガスに巻き込まれ倒れる千丸の父母。千丸は自分と同じく「岩石なだれ渡りの術」を使う少女リカと友達になる。直後、時雨山の山窩に襲われるが、千丸は「霧がくれの術」で切り抜ける。千丸はリカの父である浪人・円藤又兵衛と出会う。又兵衛は豊臣の人間であったので、千丸から巻物を盗み逃げるが、なぜか仲間である編笠の猿飛に殺されてしまう。千丸と編笠の猿飛の対決。その時編笠の猿飛が何者かに殺される。そしてなんと猿飛が何人も現れた。「おれたちはみんな猿飛さ」「猿飛は何人もいるのだ」。編笠の猿飛は金に目がくらみ、裏切り者として殺されたのだ。半年後、時は元和元年大阪夏の陣。幸村が徳川勢に竜煙の玉を使ったその瞬間、阻止しようと千丸が現れる。玉が割れ、苦しむ千丸。その時金色の鳥が現われ、毒消しの玉を落とす。

繋がりのない展開が多く、物語が破綻している。初めての連載だったが、雑誌特有の規制・縛りがある中でどうやらコツがつかめなかったようだ。本誌連載は各回8枚ずつの掲載だったが、6枚という唯一頁数の少ない最終回で無理やり完結させている。おそらく打切られたのだろう。 よって魅力のない作品になってしまっている。「甲賀武芸帳」からの要素もあり、初の週刊誌連載作品「風の石丸」にも受け継がれている。「甲賀武芸帳」の山窩少女五鈴は上半身裸だった。今回少女リカが服を着ているのは週刊誌ゆえのことだろう。冒頭の真田の忍者による爆発実験部分は「真田剣流」冒頭でも使用している。この場合、爆発に巻き込まれ死んだのは主人公桔梗の友であるイノシシになった。「猿飛は何人もいる」という展開は「猿飛誕生」や「サスケ」冒頭でも使用している。
連載回数 枚数 発表誌 「漫画王」 備考
第1回81958年9月号本誌P61-P68
第2回501958年10月号本誌ではなく単独付録本のみ
第3回81958年11月号本誌P110-P117
第4回81958年12月号本誌P203-P210(P203、P206-207、P210は二色カラー)
第5回81959年1月号本誌P140-P147
第6回61959年2月号本誌P172-P177