忍者旋風
初出と作品の変遷
この作品は続編に「真田剣流」があり、完結編に「風魔」がある。アニメ「少年忍者 風のフジ丸」(1964年)の原作でもある。
初出
貸本全4巻で発行。当初は「風魔忍風伝」というタイトルで発表された。のちの単行本化の際、この作品が収録されていた貸本のタイトル「忍者旋風」に作品名が変わる。その時「風魔忍風伝」は副題になる。

貸本「忍者旋風3号 雲の巻」風魔忍風伝 1(1959年9月頃発行/東邦漫画出版社/150円)
 ※小題「神隠し」「死神の使者」「風魔砦」「明智の忍者」「天紋」「竜煙の謎」

貸本「忍者旋風4号 残月の巻」風魔忍風伝 2(1959年10月07日発行/東邦漫画出版社/150円)
 ※小題「伊賀忍者」「金色の鷹」「狸とその部下」「謎」「土遁変化」「誓」「亡霊」「乱心法虫遁変化」「変身」

貸本「忍者旋風5号 忍の巻」風魔忍風伝 3(1959年12月10日発行/東邦漫画出版社/150円)
 ※小題「人の変化」「砂の変化」「天の変化」「光の変化」「獣の変化」

貸本「忍者旋風6号 流星の巻」風魔忍風伝 完(1960年01月頃発行/東邦漫画出版社/150円) ※12月下旬発売
 ※小題「無惨無限沼」「柳生親子」「白假面」「無限沼第二の出来事」「還元」「斑猫」「影武者」「一葉浮水」「螢火」「雷発」


以下は各巻最終頁の文章。

天下をにぎる秘密竜煙の謎とはなにか?死をまえにして小太郎は、その謎を見きわめ得ただろうかそして、天下をにぎるのは誰か?秀吉、家康、小太郎か!又小太郎をたずねる母はいつの日わが子とめぐりりあえるのか、そして名もしらぬ少年の手にわたった竜煙の書の行くえは……次号は、あらたに多くの実在した忍者、剣客が登場し物語はどのように展開して行くか?……ごきたい下さい。
※第1巻(貸本「忍者旋風3号 雲の巻」)P192より

美香の命をすくわんととびだした小太郎は風車手裏剣を胸にうけ倒れた。だがそれと同時に置かれてあった竜煙の書が動きだした……早くも気づいた美女丸の手をはなれた手裏剣は、樹上の甲虫に突立っていた。一体……この甲虫の正体は…………?又謎の老人十官とは何者なのか?……そして光る鳥の正体は…………これらを次号で究明しなければならない。そして天下は一体誰の手に、次号の完結編をごきたい下さい。
※第2巻(貸本「忍者旋風4号 残月の巻」)P192より

竜煙の書はついに魔の無限沼の底ふかくしずんでいった。だがまだ多くの解決されない問題がのこっている。本来ならばこの巻でおわるはずであった風魔忍風伝ではあったが………十官道人の正体、また風魔一族がいかにおそるべきものたちであったか、そして沼底の巻物をいかにしてだれの手に入れるか、だがさいごに勝利を得るものはだれ?……そして天下をにぎるものは……これらは次号においてすべてあきらかとなることである。完結編をご期待ください。
※第3巻(貸本「忍者旋風5号 忍の巻」)P216より

ここで一おう風魔忍風伝は終わることにする。又、その後の佐助・太郎・念仏の七兵衛・そして五衛門・白カメンの男のその後と彼等の悲壮な最後については、十官道人の正体とともに更にのべなければならなかったのだが、頁数にもかぎりがあるので、これらは次の機会にゆずることにした。この後、天正・文禄・慶長と世はうつり、天紋のほくろをもつ小太郎が、秀吉・家康とならんで天下をいかにおさめたか、人々の先に立って真に日本の歴史を発展させた者としての活動については、風魔忍風伝の続編「真田剣流」においてのべることにしよう。
※第4巻(貸本「忍者旋風6号 流星の巻」)P224より
作品の変遷
再出版された貸本「風魔忍風伝」全5巻(1961年)は初出と同じ原稿だが、それ以降の全単行本は原稿紛失による描き直し版になっている。その箇所についての比較を書く。

比較するのは初出貸本全4巻と、以降全単行本の底本であるKDC版全4巻(1967年)。 KDC版のまえがきはこういう文がある「かなりな部分の原稿が紛失していたので岡本颯子氏に依頼しトレスして戴いた」。 ではどの程度の描き直しなのか。初出貸本とKDC版は共に構成が同じ全4巻である。 描き直し部分は当時出版社から返還されなかったものや、一部原稿のいたみ(破れ・カケ)など。実際、当時原稿を作家の手元に残して置くことの方が稀だったのである。 以下描き直された頁を列挙する。頁数はKDC版のもの。

第1巻 : 登場人物紹介頁の死神小僧と風魔小太郎/P18

第2巻 : 登場人物紹介頁の風魔小太郎と石川五衛門

第3巻 : P21-219(貸本時のカラー頁以外全て) ※描き直しが貸本時のカラー頁以外全てというのは貸本「忍者武芸帳」第2巻の場合と同じ

第4巻 : 登場人物紹介頁/P16/P65/P86/P89/P104/P107/P112/P131/P138の1コマ目/P151/P156/P158/P165/P179/P188/P189/P222


この描き直しの際、以下のように元の原稿の細かいミスも逃さずきちんと修正している。

※髪に塗り残し:初出貸本第1巻P80  ※手に間違い線:初出貸本第2巻P110

描き直しといっても、描き直された全ての頁がパッと見ただけでは元のものと全く見分けがつかない。 数秒をかけ細かいところまで見比べてやっと違いが分かる。 それは線の微妙なブレや細かい斜線の角度、文字(オノマトペ)の形などからで、人物の表情など大きなところからはほとんど違いを見出せなかった。 下に元のものと描き直し後のものを並べる。 印刷制度の違いや、描き直し頁関係無く全頁塗りは変えているのでその違いはあるが、そっくりな感じが少しは分かると思う。

※初出貸本第3巻P212  ※KDC版第3巻P216

もう一つ、初出貸本にはKDC版第4巻冒頭の部分にプロローグが6頁分入っている。 これはKDC版第3巻ラストP211-218の描き直しであるので、削られても何の支障の無い頁であった。実際再出版された貸本「風魔忍風伝」第4巻では削られている。 貸本「風魔忍風伝」第4巻はKDC版第3巻P135から第4巻P84までの内容。

最終頁も描き直しだが、CC版では何故かもう一度新たに描き直されている。 初出時無表情だった美香がKDC版で少し微笑み、CC版以降は完全に笑っている。この辺の重要な描き直しが作者の意図としてのものなのかは判らない。

※初出貸本第4巻  ※KDC版第4巻  ※CC版第4巻